Charlotte Weekly 1997.02.02.号 通巻 第27号

米国でのクレジットカードの周辺

今週は、米国でのクレジットカードをめぐる、事実関係について、ご報告致し ます。ここでは、信用とは何かという点が、凝縮されていますので、考えさせ られることも多いです。

まず、米国ではクレジットカードはほとんどあらゆる場面で使えます。小額の ガソリンの支払いから、高額の車の代金の支払いなどすべてをカバーします。 そのカードを使用する時に、どんな田舎に行っても必ず端末があります。 それは、常にカード会社に与信状況を確認するために使われます。これは日本 での利用の仕方と比べると、大きく違っています。すなわち、どんな辺鄙な 場所でも、クレジットカードを使うときには、カード会社にそのカードの与信 状況を確認するシステムになっているということです。私の経験では、日本に いたときはクレジットカードの支払いは、端末に接続しなくても、処理されま した。しかし、米国では毎回必ず、カード会社に確認して処理をするわけです。 ですから、カードの利用限度額を超えると、すぐに使用停止の処理が取られ ます。これは実に見事なまで管理されていて、私たちもその被害?にあった ことがあります。

もうひとつ、端末処理で面白いのは、ガソリンスタンドです。カードが使える ガソリンスタンドは、ガソリン供給のポンプ毎にカードの端末が来ています。 米国のガソリンスタンドはほとんど「セルフ」サービスですので、自分でガソ リンを入れます。その一つ一つの「ポンプ」にカードの利用端末がついていま す。そこで利用者は、カードを使って支払いをすることができるわけです。 一つのガソリンスタンドには4―8台位の「ポンプ」がありますから、その 一つ一つに端末を持たせて、与信状況を確認するということは、通信インフラ を考ただけでも、ものすごく整備されているシステムとしかいいようがありま せん。驚くほど充実したインフラになっているわけです。そして、以前ご報告 しましたように、市内通話料金は、「基本料金のみ」ですから、その端末の 利用料金も特別なコストはかからず、信用状況を把握しているわけです。 さて、次に米国で、クレジットカードを獲得すのは、殊のほかむづかしい点が あります。契約時には当然「審査」があるわけです。私たちの経験では、その 審査項目のうち「支払い履歴半年以上」「米国での居住期間1年以上」という 項目のところで、ずいぶんと手間がかかりました。ルールどおりにチェック されて、特別な取り扱いなどはしてくれませんでした。この時に、米国での クレジットカードの信頼性は、このようなプロセスに由来していることを実感 しました。それは、クレジットカード会社から見たお客の「信用」の確認です。

そんなわけで、利用するとサービスのつくカードもいろいろありますので、消 費者はカードを次々に手にします。しかし、米国の消費者は、逆にクレジット カード会社がいいかげんなことをしないか、支払いの時点でチェックをします。 すなわち、次のような方法で、クレジットカードの支払いが行われます。 まず、毎月消費者の手元にクレジットカードを利用した金額の「請求書」が 送られてきます。そこには、「明細書」がついていて、消費者は一つ一つ確認 します。それで、「OK」になると、パーソナル小切手を送り、支払いをしま す。少しでも、おかしい項目があると、クレジットカード会社に連絡して、 事実関係の確認を求めます。このとき、その支払い項目は「保留」になります。

このシステムは、意図的な不正を防ぐ目的もありますが、基本的には「誰にで も間違いがある」それを「チェックする」のは「当事者の責任」という思想が 徹底しているからだと思います。そう思って何人かの友人に聞いてみると、 「自分を守るのは自分しかいないから、これは当たり前だ」といっていました。 日本では「銀行口座引き落とし」という自動的に支払われるシステムがある ことを説明したところ、「それでは、不正のチェックはどうやるのか?」と 聞かれてしまいました。確かにこの方法では、間違いが起こった後にしか、 「事後処理」で対応するしかないわけです。
自分に関わることは、自分がチェックできる範囲できちんと行うというのは、 どうやら米国社会での根底のようです。そして、カードは恐いから使わない という人も多くいます。確かにカード破産なども多い米国の社会ではあるの ですが、実際の周りの人たちと話をしてみると、思わぬ考え方に出会います。 カード社会の実像の一つがここにあると思います。


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