Charlotte Weekly 1996.11.03.号 通巻 第14号

インターネットをめぐる戦い その1

こちらはサマータイムも終わり、ハロウィーンも済みましてすっかり晩秋とい う感じです。皆様、お変わりございませんか。さて、今週はインターネットを めぐる戦い その1、をお届けします。

インターネットはご承知のように、現在全世界的に広がりつつある、ネットワ ークシステムです。その歴史は、1970年代に米国国防省が、核攻撃を受けた 時に、通信を確保するにはどのようなシステムが適しているかを検討した時か ら始まります。従来の集中管理では、中枢を破壊されたら通信機能がマヒして しまします。そこで、分散ネットワーク型のシステムとして開発された経緯が あります。これなら、一個所が破壊されても、他の拠点がカバーすることがで きて、通信は確保される訳です。1991年の湾岸戦争でも、連合軍はまず、 イラクの通信施設の破壊から始めたことは、記憶に新しいことです。

このようなシステムは、通信技術、コンピューター技術、そして閲覧ソフトウ ェアの開発と、密接に絡んでいます。始めは、ネットワークは大学や研究機関 のコンピューターを、「ボランティア」として使うことからスタートしました。 それも、文献情報を研究者同士のやり取りに使うことが中心でした。 これが、昨年からのマイクロソフト社のWINDOWS 95の発売、インテル社の PENTIUMプロセッサーの完成、そしてネットスケープ社のネットスケープ・ ナビゲーターの開発がほとんど同時に行われました。その相乗効果で、現在 インターネットは、従来の勢いにもまして、文字どおり爆発的に広がりつつ あります。

今回は、第一回目として閲覧ソフトウェアをめぐる戦いをお送りします。

この世界は3ヶ月前の情報はもはや使えないと言われるほど、進歩の早い分野 です。その開発の中心である、カリフォルニアのシリコンバレーに先月行き ましたが、朝6時というのに、ハイウェイはすでに交通ラッシュになっていて、 その元気さにびっくりしました。

ご承知のように、マイクロソフト社は昨年発売したWINDOWS 95で大成功を 収め、Bill Gates氏は3年連続で、FORTUNEの富豪ランキング1位となりま した。今回のWINDOWS 95は徹底的にAPPLEパソコンのソフトウェアの使い やすさをWINDOWSに導入したものです。ですから、一部のAPPLEマニアか らは、WINDOWS 95=APPLE 89だとも言われたりしましたが、操作性などは WIN3.1に比べると格段に良くなったのは事実です。その成功は、パソコンに 優れた機能を持たせるもので、インテルのPENTIUMプロセッサーと合わせて、 DOS/Vパソコンとして市場を席巻しています。

しかし、先ほどのインターネットの世界では、閲覧ソフトがどんどん改良され、 ネットスケープ社のネットスケープ・ナビゲーターというソフトが広く使われ るようになりました。これは、インターネットを使って情報をやり取りする際 に、それを見たり、聞いたりすることができるようにするソフトウェアです。 これは、マイクロソフトのWINDOWSでももちろん作動しますが、あらゆる ネットワークのコンピューターをつないでデータのやり取りをできるように してしまう、ソフトウェアです。

今年の2月、WINDOWS 95の成功が確認できた時点でしたが、マイクロソフト のBill Gates氏は、閲覧ソフトでも、マイクロソフトはリーダーになると宣言 し、もし、このネットワークで生き残れなければ、(マイクロソフトといえど も)滅びるだけであると発表しました。現在、マイクロソフト社は、インター ネット・エクスプローラーという閲覧ソフトを公開しています。この閲覧ソフ トの特色は、マイクロソフト社の製品でパソコンとしても、またインターネッ トのネットワークでも、すべてが統一的に機能するということを特色としてい ます。

ネットスケープ社の考え方は、インターネットに分散している一つ一つのシス テムのもつ機能はそのままにして、各システムを統合してゆくという考え方で す。今年の7月には両者が、閲覧ソフトのVer. 3.0を公開しました。 ネットスケープ・ナビゲーターというソフトは$49で売られていますが、この 時点での市場でのシェアは85%といわれています。それに対して、マイクロ ソフト社は、インターネット・エクスプローラーを「ただ」で提供し、しかも、 有料のインターネット情報、ウオールストリートジャーナルなどを、今年一杯 「ただ」で読めるおまけまでつけました。

先月の調査機関のデータでは、ネットスケープ・ナビゲーターのシェアは80% で、それに対しインターネット・エクスプローラーは8%という数字になって いました。米国では、個人でインターネットに接続している家庭が30%を越え たようです。しかもその中の5%は家の中でネットワークを作っているそう です。これに対し、私は日本では個人としてはまだ5%以下ぐらいではないか と推定しています。

インターネットをやりはじめてからいくつかのことに気が付きました。 まず、驚くのは、ネットスケープ社やマイクロソフト社が、お客を取り 込む貪欲さです。両社とも閲覧ソフトは実に多様な言語をサポートしています。 アジア圏では日本語はもちろん、韓国語、中国語その数を見ると、世界は本当 に広いなーと思いますし、このような広がりをはじめから考えて商品を作り上 げる人々の「志」をひしひしと感じるのであります。

インターネットで読む日本の新聞に、時々インターネットテレビの記事が出て います。それによると日本語でインターネットが楽しめるとあります。でも、 なぜ日本語にこだわってインターネットを始めるのか理解に苦しむ時があり ます。世界につながるからインターネットであり、その世界を見据えているが ゆえに、多様性と統一性を求めた激しい戦いが今行われている訳です。 そこには日本のもの作りのかげは見えるのですが、世界を変える意気込みや、 貢献は目立ちません。その中で、言葉の壁を持つ日本人が本当にできることは 何だろうかと考えると、インターネットの持つ広がりに主体的に関わることが、 ひとつの鍵ではないかと考え始めるこの頃です。


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