Charlotte Weekly 1997.02.09.号 通巻 第28号

米国の運転免許

今週は、米国の運転免許制度についてご報告します。これについて我が家では、 2通りの取得方法を経験しました。それにもとづき、把握できた事実をご紹介 いたします。

まず、私たち夫婦の場合です。この場合は、すでに日本で免許を持っていまし たし国際免許も取得していましたので、こちらでは、そのまますぐに運転する ことができました。ただ、実際に住んでみると、州の条例では、他の州からの 移転後30日以内に「その州の」免許を取らなければいけないというルールが あることに気づき、慌てて交通規則を勉強し、実地試験を受けて、米国の免許 を取りました。こちらに引っ越してから、約半年後に取得しました。

免許の、試験内容は「交通法規」と「実地試験」でした。運転免許試験場に 試験の申し込みに行くと、試験の実施日を指定され、交通法規の教則本と、 過去の出題サンプルが手渡されます。教則本を勉強して、試験問題の例題を 解いて、試験に臨みます。試験当日は、受付を済ませると、来たもの順に、 筆記試験をします。そして、適当な時間で終わらせると、すぐに採点されます。 採点が合格だと、視力検査をして、自動車保険に加入していることを確認した 上で、その場で実地試験に移ります。実地試験は、自分の車を持ち込んでやり ます。そのとき試験官は、助手席に同乗し、チェックします。私の場合は、 試験場の中のコースで3点ターンをやった後、すぐに、一般道路に出て、 2マイルほど走って、終わりでした。チェックポイントは信号待ちや一旦停止、 制限速度の遵守などを確認しているようでした。

実は、私はこの3点ターンでやり直しを言い渡され、再試験を受けました。 自分の車とはいえ、やや大きな車だったため、切り替えしの時にやり直したこ とが、原因でした。それはそれとして、実地試験が「無事」に済めば、試験場 ですぐに、免許証を発行してくれます。写真をすぐに撮り、免許証をすぐに 渡してくれます。(これは州によって大きな差があって、不法移民のチェック の厳しいカリフォルニア州では、試験に合格しても、外国人への免許発行は、 3ヶ月以上待たされるという状況です) ちなみに、この、免許取得にかかった費用はというと、約30ドルでした。 有効期間は、7年間でした。

さて、ごく最近経験した運転免許の獲得方法を、ご報告します。 私のところの長男が免許取得の年齢に達しました。この間、免許を取るために いろいろと教育や、実地訓練を受け、現在は運転免許を手にしています。 しかし、現在「仮免」という取り扱いになっています。 その免許取得の過程と取り扱いに、日本の考え方と大きく違うところや、 面白いヒントなどがあり、ここにまとめてみたいと思います。

こちらでは満16歳で免許がとれます。その前1年間は、「仮免」という扱い があります。「仮免」とは、普通の運転免許の発行を受けているのですが、 年齢が16歳になるまでの間、親が同乗しているときにのみ、運転できる制度です。 それを「仮免」と呼んでいるわけです。私のところの長男も15歳になりましたの で、学校の主催する「免許取得プログラム」に参加しました。

まずは交通法規の教育です。これは、放課後学校に講師が派遣されて来ます。 そして、2時間ずつ5日間教育して、終わったところで、学科試験があります。 これは、運転免許試験場と同じような問題が出されます。

それに合格すると、次は実地試験です。これも講師が放課後、学校まできて、 生徒の運転実地指導をします。
私のところの息子は、今まで、一度も車を動かしたことがなかったのですが、 実地訓練で、まずはじめに「ハイウェイ」に入って、そこで目一杯スピードを 上げるようにと言われ、時速85マイル(約140Km)で走ったそうです。 息子も驚いていましたが、それを聞いた私たちもびっくりしました。 これは、決められた手順かどうかはよくわかりませんが、考えてみると、ある 意味では、とてもおもしろい教育方法だと思います。危険性の限界、あるいは 好奇心の対象を先に体験させて通常の運転を、考えさせるわけです。 米国的「現実主義」の一端を垣間見た気がしました。この実地訓練は4日間 行われましたが、もちろん初日以降には、そんなスピードの再体験は行われ なかったそうです。これも、合否判定がなされて、合格すると、学校での プログラムは終了します。

そのあとは、実際の免許申請手続きになります。これは普通と同じ手続きで 運転免許試験場で行われます。プログラム合格者は「実地試験」は免除に なります。そして、やはり30ドル出して、免許証を発行してもらいます。

このように、免許証が日本より早く「必要」になるのは、やはり車社会である ことと、自立を要請する社会構造に由来するのではないかと考えています。 私事ではありますが、長男の学校の送り迎えだけで、1日に家と学校を4往復 することがあります。その理由は、授業と、課外活動が時間差で行われるため です。私のところは家内が時間をやりくりしてくれていますが、もし米国の 「標準的」「共働き」の家庭でしたら、とても大きな負担になります。 そんなこともこちらで生活してみるとよく分かります。だから、早くから車の 運転をさせるようになっているのではないかと思います。

話は少し変わりますが、運転免許証というのも、実際に取得して見ると、日本と 同じように、身分証明書の役割が大きいことが分かりました。すなわち、買い物 で「パーソナルチェック」を使う時には、身分証明書の提示が求められます。 その時には、社員証や、パスポート、国際免許証などは証明書になりません。 ほとんどの店では、米国の州の発行した免許証の提示を求められます。もし 持っていなければ、現金か、クレジットカードによる支払になってしまうわけ です。われわれも、米国で免許を取得するまでは、「パーソナルチェック」を 買い物に利用できませんでした。日本でも、免許証が身分証明書として有効な ところは多いですが、国民の大多数が免許証を所持するようになると、これが ないということは社会のシステムの中にすんなりとは受け入れられなくなること のようです。

PS日本では、インフルエンザが流行っているそうですが、どうかお気をつけ ください。ひき始めには番茶に塩を入れたうがいなど、効果があるそうですが。


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