Charlotte Weekly 1997.05.11.号 通巻 第41号

注文の多いお客さん

今週は、レストランや飛行機内での注文についてご報告します。知れば知るほど 日本との違いが大きく表れているような気がします。

−いろいろなオプション−
もし、米国のレストランでサラダが食べたくなったとしましょう。そのとき あなたは、サラダとそれにつけるドレッシングを考えておかなければいけません。 もし、ステーキを食べたくなったら、あなたはその焼き加減について考えておか なければいけません。もし、食後にコーヒーを飲みたくなったら、それに砂糖を 入れるか、クリームを入れるか、はたまたミルクにするのかを決めておかなけれ ばいけません。なんという煩わしさでしょうか。そのような事が、米国社会のな かにどのように広がっているか、そして、日本との比較をしながら、その意味を ご報告したいと思います。

−日本と比べると−
米国では会社を訪問した時でもはじめに、「何か飲み物は欲しいですか?」 「暖かいものと冷たいものはどちら?」とか聞きながら出てくる飲み物が決まり ます。これで、飲む本人の意向を尊重してとり進められるわけです。
日本では、会社を訪問した時には黙っていても「お茶」か「コーヒー」が出て きます。わずらわしい手間をかけずに、即出てきます。これは、多くの種類の 準備をしなくてすみますし、打ち合わせに関する時間効率も良く、手間も少なく てすむメリットがあります。同じように、機内食や飲み物で、選択肢の多いのが、 米国の航空会社で、少ないのは日本の航空会社です。

−なぜそんなに選択肢が多いのか−
これは、ひとことで言ってしまうと「人種の多様性」に由来する「サービスの 対応」の結果といえると思います。世界中の人たちが集まり、それぞれの文化 背景を持っているわけです。その中には、菜食主義もあり、豚肉は食べないけれ ど、牛肉は食べるとか、その反対に牛肉は食べないが豚肉は食べるなどと、まさ しく、「いい悪い」とか「どれが優れているか」などの尺度が決められない事柄 ばかりです。その中で、「相手の嗜好を認める事」ができれば、誰もが不満なく 暮らせる可能性が広がるわけです。ですから、お互いを尊重するという思想は お互いが違うという事を前提に考えている事になります。

−たくさんの選択肢の結果は−
沢山の選択肢があると、どのようになるでしょうか。わたしはこの中に、「コカ コーラ」が生まれた背景があると思います。ご承知のように、完全に人工的な 飲み物で、世界中でこんなにたくさん消費されている人工飲料は他にありません。 子供の頃初めて飲んだコカコーラの味は、何やら石鹸臭くてまずかったという 記憶があります。しかし私自身今では、その味に慣れましたし、どちらかと 言うと、飛行機の中では、それらを指名したりしています。
これは私個人の問題なのですが、ひるがえって、コカコーラが米国で大きく伸び た原因を考えますと、沢山の多様性を受け入れる寛容さが下地となっていること に一つの大きな原因があると気がつくわけです。

−再び日本の場合には−
日本の場合には、人種的な多様性も少ないですし、食べ物の嗜好もも、人々の間 ではそんなに幅広くありません。ですから「黙っていると」お茶かコーヒーが 出てくるし、それも出す人の配慮で決められて、スムーズに進んでゆくわけで す。これももちろん「良い」「悪い」の対象ではありません。民族の持つ特色で あり、思いやりであり、嗜好なのですから。そして、日本にはそれがゆえに 「茶道」という伝統文化にまで発展させたものまであります。ですから、日本の 進め方はとてもユニークで素晴らしいのです。

−世界に通じるには−
ですから、この素晴らしさを、「お互い様」という意識で持てれば、これが多様 性を認める感覚になると思います。素晴らしいから「これで良いのだ」と考えず に、「素晴らしいものの一つ」がたまたま日本の「お茶」と「コーヒー」の選択 に表れていると考えるのは、実際的な、平等感覚のように思います。
これは多様な選択も認めた上で、その一つに取り込めば、国際社会での大人の 考えに近づくと思えるのですが、いかがでしょうか。


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