Charlotte Weekly 1996.11.24.号 通巻 第17号

インターネットをめぐる戦い その4

情報暗号化技術とマスコミの対応

パソコン関連の展示会では、世界最大のCOMDEXに行ってきました。ラスベ ガスが一年中で一番賑わうといわれるショウで、 COMDEXという会社が運営 していますが、一昨年ソフトバンクの孫氏がこの会社を買収して以来今では 日本人の経営になりました。今年の展示内容はWindows 95とINTEL一色 だった昨年の展示とはだいぶ異なり、ネットワークとアプリケーションの展示 が着実に増えていました。 ハードウェアではなく、ソフトウェアの比重が大きくなってきています。 データ処理というパソコンの機能を保ちつつ、個々のパソコンのネットワーク が、今までになかった新しい世界を築いてゆくことを予感させます。

さて、今週はインターネットの中で近い将来の技術である暗号化技術と、現在の マスコミの動きとについてご報告します。

1. 情報暗号化技術
現在、インターネットの利用の中でセキュリティーをどうやって確保する かというのが、問題になっています。ブラウザという、閲覧ソフトについ ても、セキュリティーをどのように確保するかにいろいろ工夫がされてい ます。これは、インターネット情報がいろいろなサーバーを経由して相手 に到達するというしくみになっているために、途中で情報が解読されたり、 変更されたりすることを防止することを目的としています。米国でのイン ターネットのセキュリティーというのは、ネットワーク上での情報も含め た暗号化であり、国家の安全保障項目のひとつに位置づけられています。 私は、ネットスケープ社のネットスケープ・ナビゲーターという閲覧ソフ トしかわかりませんが、Version3.0になってから、セキュリティーが大変 強化されています。特に、128ビットセキュリティーを取り扱うのは厄介 で、この機能を利用するためには米国の政府の許可が必要です。具体的に は、米国市民であることがひとつの条件になっており、われわれ日本人国 籍の者は簡単にはこの暗号化部分は利用できません。 この中味が、データの暗号化であり、将来の電子マネーやサイバーモール での支払いに絡んでいるわけです。先日も議会では、暗号化技術がNTT から提供されているのは、国家安全保障を阻害するという議論まで出てき ており、国際規模での議論に発展しています。この事は、インターネット が単なるオープン情報の交換にとどまらずに、秘密情報や電子マネーの 流通経路になりうることを端的に示しています。それは、国家だけでなく 企業や個人も安心して利用できる「場」を提供するためにどうしても通ら なければならない道です。ですから、インターネットはボランティアで 運営された世界から、安全の確保された世界へと変身しようとしています。 そこでも、技術を提供して仲間を増やしてゆくという相互扶助が働いて いますが、中味は大きく変化しているわけです。

2. マスコミの動き
インターネットにおけるマスコミの動きには、驚くべきものがあります。 新聞社が競って、インターネットに新聞を掲載しています。今のところは、 ただで見ることのできるものが大部分で、私も地元の新聞はとっています がほかにNYタイムスなどが最新版で読めるのでよく利用しています。 記事も決して見出しや抄録だけでなく、本文も読めますし、もっとありが たいのは、関連情報がリンクされていることです。これについては立花 隆 さんの「インターネット探検」という本に詳しく書かれていますので、 興味のある方はそれを参考にして下さい。もちろん、現在は日本の新聞も 数多く(20以上あります)読むことができますので、先日の選挙の結果 など常に、最新の情報を知ることができました。本当に米国に居るのか 疑いたくなるときがあります。何しろすごい世界が出現したものだと実感 するわけです。 では、このようなボランティアの世界にマスコミが入ってきた理由は何で しょうか。私は、これこそ自己表現の場の競い合いではないかと考えるわ けです。インターネットにページを出すことは、経済的には、制作出費が 増えますので当面は大きなメリットは出ないかもしれません。しかし、 マスコミのメディアの中での役割として、自分たちはこれだけのことがで きるということを、積極的にアピールしている世界が出来上がっています。 実に多くの新聞社がホームページを持ち、最新情報を公開しています。 これは、言葉では言えないほど、すごい世界です。しかも、既存の紙面が これに置き換えられてしまう可能性もあるわけですから、マスコミも命が けだと思います。もちろん、実際には有料化のタイミングも狙っているこ とは間違いありません。しかし、現在のレベルが人々に認知されない限り、 有料化をしてもお客が来ないことになるわけで、今でも、ホームページの コンテンツがますます充実してゆくひとつの理由です。 では、ホームページで記事を公開したときの売り上げとの相関はどうなっ ているでしょうか。いくつかの例をご紹介します。少ない例ですが定性的 にまとめました。 米国の新聞社の売り上げはあまり変わっていないということのようです。 パソコン関係の雑誌「WIRED」では、ホームページを立ち上げたら売れ行 きが20%伸びたそうです。 日系の新聞では、米国に住む日本人のあいだにインターネットが普及する につれて、配達の分の売り上げが落ちているそうです。 まだ、これだけの事実で結論が出せるとは思いませんが、時間と空間を 超えたメリットの発生するときには、既存のマスメディアはインターネッ トへと置き換わるのではないかと推定しています。 ただ、もはやインターネットに載らないメディアは自己の存在基盤すら 危うくなりそうな状況になってきているのも、事実のようです。 選挙報道なども、インターネットでの情報の方がTVニュースよりも早い とか言われるほどになりました。マスコミ自身がインターネットに大変力 を入れてきていることも事実です。それにしても、マスコミはもはや 「パンドラの箱」を開けてしまったのではないかと思います。あとは、 ひたすら進むしか残されていない状況に来ていると思います。


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