Charlotte Weekly 1997.02.16.号 通巻 第29号

米国人と映画 その1

映画大好き!の巻

今週からは、米国における映画について、ご報告いたします。
正直申し上げて、映画という文化を論じられるほどには、実情に詳しくは ありません。
米国の映画を語ることは、米国の歴史を語るに等しいくらいの大きなテーマ なのではないかと、思っています。なにしろ、米国では、映画が生活の一部に 入り込んでいるのが、実感としてよく分かります。しかもその奥行きは、計り 知れません。そんな状況ではありますが、今回も、実生活体験に基づいた事実 と、手持ちの「少ない資料を基に」あえて「大胆な推察」をしてみたいと 思います。

ハリウッドは、現在では「強大な」力を手にしているように見えます。
これは、ついこの間の日本企業の、米国映画会社の買収でも分かるのですが、 日本企業のような(あのSONYのカルチャーも含めて)経営手法は使えない 世界であると言うことが分かりました。その原因はいくつかあると思いますが、 米国文化の集積結果としての存在が、映画産業に表れているためだと思います。 すなわち、自分たちのことは、自分ですると言う伝統と、使えるものは何でも 使うという米国文化の根幹を「象徴的存在」の映画産業が具現しているのだと 思います。
これが、いまや米国の産業として大きな影響力を持ち始めてきています。 そのあたりを、市民生活の中と、産業と言う中での位置づけで、掘り下げて ゆきたいと思います。

まず、生活と映画の関係についてですが、隅々まで浸透しています。 映画館は街の中の、ショッピングセンターの中にあります。そのショッピング センターの中の映画館は、4-8の映写室(それが、普通で言う映画館ですが) から成り立っています。ですから、買い物がてらに、映画館に行くと、 いくつかの映画の中から、自分の見たい映画の選択ができるわけです。
私の住んでいる街は、人口が50万くらいですが、このような映画館が10以上 あります。ですから、いつも、上映している映画の数としては重複もいろいろ ありますが、数十本くらいにはなります。
映画館の、入場料ですが一番高いところでも$6です。安いところは$1.5で、 家族で出かけても実に安い娯楽になっています。
むしろ、こちらから見ると、どうやって経営が成り立つのか不思議なくらいで、 私たちは、映画館の中で、コーラとかポップコーンを買って、売り上げに協力 します。それでいて、一つ一つの映写室は、日本の中規模の映画館程度です。 音響効果とかは、ドルビーサラウンドなどがついているところもあり、設備も それなりに整っています。

そして、私が感じるのは、米国人は「映画大好き!」です。国内の飛行機でも、 3時間以上飛ぶ場合には、映画のサービスがあります。映画を「聞く」ための イヤホーンは4ドルしますが、多くの人は、イヤホーンをつけて、映画をエン ジョイしています。私の経験では、米国人の同僚と出張すると、彼は泊まった ホテルで時間さえあれば「映画」を見ています。どこでも、映画をやってい ますし、見るのが大好きな人たちばかりです。私の同僚は、最低毎週1本は 映画を見ているそうです。もちろん、テレビで見ることが多いそうですが、 映画館でみることもあるそうです。それにしても、生活の中に、密着している のが、よく分かります。

ちなみに、手元のケーブルテレビの映画専門チャンネルの数を見ると、15局 ほど載っています。これは、24時間ぶっ続けで映画をやっているわけです から、供給する映画の数は膨大なものになるわけです。
これ以外にも、最近話題のDirecTVなどがあるわけですから、映画産業の供給 能力は、計り知れないものがあります。封切りされる映画で数えてみたのです が、日本で公開されている映画の数は、こと、米国の作品に限れば、こちらで 公開された映画の1/3位ではないかと思っています。もちろん駄作もある でしょうから、一概に数の比較は意味を持ちませんが、文化背景を考える上 ではもっと日本にも映画が入ってもいいのではないかと考えています。 私のところでの、映画鑑賞実績は、こちらにきてからは、映画館に6回ほど 出かけましたし、TVでは時々映画を見ます。平均して月に2本位を見て います。日本に住んでいたときより、はるかに多くの映画を見ています。

そして、映画に関してのマスコミの取り扱いは、特別です。
CNNをご覧になっている方は、お気づきだと思いますが、Showbiz Today というニュース時間帯が取られていて、ハリウッドに関するニュースが、毎日 流されます。これは、ほかのTVチャンネルでも同じで、ハリウッドの動きは 多くの人たちの関心事です。これが、通常のニュースと同じに取り扱われて いるわけです。新聞も、週末には映画特集を組みますし、本当に、映画が生活 に根づいています。

次に、映画の産業としての位置づけです。規模から言いますと、一番大きな Walt Disneyで売り上げは1.3兆円ほどです。しかし、最近の株価の上昇や、 産業構造の変化に伴い、映画産業はその地位を高めています。 株価の 市場価格(株数×株価)では、今まで、1位にいたGEをWalt Disneyが 抜いてしまいました。これなどは、「産業の構造変化」の現われの一つだと 思います。

では、その産業はどのような構造になっているのでしょうか。 私の考えでは、映画産業は、4つの構造から成り立っていると思います。

映画の、原作、脚本に関わる部分。 作家、脚本家、出版社 映画製作での、技術に関わる部分。 演出家、監督、ハイテク企業 スターを作り、活躍させるシステムの部分。 映画会社 そして映画を、観客に売り込む部分。 映画会社 この4つだと。思います

これは、現代の人間の文化活動、ビジネス活動がすべて凝縮されていると 考えられます。次回以降、順次その現状と背景とをご説明してゆきたいと 思います。


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