Charlotte Weekly 1997.03.23.号 通巻 第34号

誉めて育てる社会の巻

今回は、誉めて育てるという、米国の社会風土についてご報告いたします。 こちらに来てから、我が家もいくつかのカルチャーショックを受けています。 その中の一つが、「誉めて育てる」教育です。これが、実際にはいろいろな 場面で米国文化の「基盤」につながっている事を、痛感します。それを、やや 体系的にまとめてみたいと思います。

−ウチの子を誉める風土−
こちらの、家族は「身内」を誉めます。それも、他人に対して、日本的には 「臆面もなく」誉めます。そして、家族だけでなく、近所や会社でも、まず 人を誉める事から、入ります。これは、とてもいい習慣だと思いましたし、 逆に、我が家では戸惑いもありました。でも、誉められた時には構えずに 「ええ、そうなんです」と答えるのが、ベストのようです。

−誉める事の、個人への影響−
このような、「誉める事」がどのように個人に影響を与えるか、考えてみま しょう。これは、自分の「存在」あるいは「行動」が、他人から認められる という事を意味しますから、自分の「考え」に「肯定的」になれます。最近 日本で話題の「脳内革命」の中で強調された「ポジティブ思考」と、同じ思考 形態が、他人によって到達させてもらえるようになっていると思います。 そして、誉められた本人は「エンドルフィン」の快感を味わい、ますます 「誉められた事」を発展させて行くことになります。

−誉める事による、社会の仕組みへの影響−
個人的なレベルでは、当然のことながら誉められればうれしいわけです。 しかし、それでは、自分の「考え」や「行動」を更に発展させてゆくのに、 障害や、問題点はないのでしょうか。それには、考え方や、行動をサポート する体制がどうしても、必要となります。
わかりやすい例として、すばらしい能力を持った、スポーツ選手候補が、田舎 に埋もれていたとします。その人は、うまいから「誉められる」わけですが、 その次がなければ、その人自身には、更なる「発展」が発揮できません。 当然自分で、次のステップを探すでしょうし、それでも不足なら、次への アドバイスをしてくれる人を探します。その人は、その気にさえなれば、 次のステップにチャレンジできるような、社会のシステムが、必要になります し、実際にそのような活動が行われています。これは、いろいろ見てみると、 ビジネスの分野でも、確かに存在しています。これにも、有料と、無料とか、 結構あります。この存在が、「個性の尊重」の結果を具体化するという役割に に大きく貢献していると思います。

−社会のダイナミズムと個性の尊重−
羊頭狗肉(山羊頭苦肉?)を承知で社会のダイナミズムと関連させると、 誉める事は「いいとこ取り」のできる社会、変化のスピードの速い社会と密接 につながる事が、わかります。いいと「誉めて」それを実行させて、更に 「誉めて」具体化するというメカニズムが、本人のやる気を引き出し、更に、 社会に新しい「風土」を送り込む事になるからです。しかも、それは、 「多様化の容認」とも密接につながります。

−誉める事の裏側−
では、誉める事の裏側には、何があるのでしょうか。それは、したたかな 「計算」です。当然、誉めるためには、その人を「良く」見る事が必要に なります。ですから、誉める時には、その相手のいいところも、悪いところも 知っていて言葉に出すわけです。ですから「誉められる」ことは、ある種の 評価を受けた結果と考えるべきです。ちなみに、米国のマスコミの中味は、 ランク付けのデータで一杯です。有名なのは、Forbes誌の、世界のお金持ち ランキングとか、Fortune誌の世界企業ランキングとかですが、それ以外にも ものすごくたくさんの、ランキングがあります。
私の手元にある、雑誌や新聞から例を挙げますと、「1996の株式収益ランキ ングベスト250」「退職後の住みやすい街、ベスト100」「仕事の見つけやす い街ベスト500」「21世紀を読み取るための24人の意見特集」「今週のお勧 め映画」etcで、それぞれの評価基準にもとづいて、実に様々なランキングが 存在していますし、人々は、それなりに参考にしているように思います。 ですから、誉める事の重要性を理解しつつも、その裏側は、厳しい評価に つながっていると思います。でも、それはいざという時のものであって、 日ごろは「にこにこ」していればすむレベルだと思います。
そのような、多面性の評価を同時に行って、優れているところを使ってゆく 厳しい、社会背景もあるわけです。

−UNITED STATES of AMERICAの意味するもの−
これらのことが、多民族の集合体を常に「活力のある状態」にして、「連帯」 した国家を形成し、繁栄させつづけるメカニズムだと思います。ですから、 UNITED STATES of AMERICAというのは、合州国という、地理的、物理的 な名前もさる事ながら、連帯した状態を保ちつづける国、と考えても正しい 理解であると思います。

−編集後記−
今週はNYCへの出張中に、愛用の日本製F社のラップトップパソコンが突然 不調になり、メール送付や文書作成に、多大な影響が出ました。ただ、仕事柄、 重要なファイルは日頃からMOにバックアップをとっていましたので、本質的 には大きな問題にはなりませんでした。このようなことも、実際には起こりま すので、蛇足ながら皆様方におかれましても、日頃の備えをお勧めいたします。


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