Charlotte Weekly 1997.05.18.号 通巻 第42号

腹が減ってはボランティアはできぬの巻

今週は、子供たちが毎週土曜日に通っている、日本語補習学校の、ボランティア に参加した経験をもとにご報告します。

−日本語補習学校の位置づけ−
Charlotteには、生徒数170人ほどの日本語補習学校があります。この生徒数は 幼稚園から高等学校までの生徒を含んでいます。帰国後に日本の学力に遅れを とらないようにと言う趣旨で1980年から設立、運営されています。ですから 授業科目は、国語と算数(数学)が中心です。毎週1回土曜日に、現地の小学校 の校舎を借用して、授業が行われています。私のところの高一と中一の子供も、 通っています。

−初めてのボランティア−
私は今年、その補習学校の運営委員と言うのになりました。これは補習学校の 校長先生をサポートし予算や先生方の仕事をやりやすくして生徒が中味の濃い 授業が受けられるようにする、お手伝いをします。
今年はなぜか「アグレッシブ」な運営委員の人が多く、すべてを積極的に受け止 めるというメンバーが集まりました。そこで、ある金曜日に現地の学校の校長 先生から「明日の土曜日に、校庭の花を植え替えるから、手伝ってくれないか」 という問い合わせがありました。もちろん「アグレッシブ」運営委員は自らは OKですし、お母さん方に参加も呼びかけて、いよいよ土曜日になりました。

−仕事の段取り−
仕事の中味も良く分かりませんので、とりあえず9:00から仕事にかかる事に しました。当方は約10名、現地学校の父兄は5-6名と言う事で、仕事は開始 されました。内容は、潅木(かんぼく:背の低い木)の周りにたい肥を敷き詰め 花壇には花を植え、そしてその周りには枯れた松葉を敷き詰めると言うものです。 対象となる場所はやってみるとなかなか広く、日頃から庭の手入れをしていない 私などは、単純労働だけをこなすのがやっとです。ですから、たい肥を手押し車 で潅木の根元に敷き詰める部分を担当しました。

−たい肥は芝生のリサイクル−
たい肥は校庭のたい肥の山を崩しながらを運びます。その山が2つありました。 これは、どうやって作ったのかと聞いたところ、「このたい肥は刈り取った芝生 から作っている。それは、市のたい肥製造所からただでもらえる」と言う返事が 返ってきました。そう言えば庭の芝刈りの後、刈り取った芝は普通のごみとは 別に回収していますので、そのような取り扱いが可能になるわけだと理解しま した。自分で運ぶのならいくらでもただでもらえるよ、とも言っていました。

−さて、一服−
仕事も、軌道に乗り手押し車にたい肥を積む人、運ぶ人、花壇を整備する人、 なかなか快調に進んでいます。作業は快晴の天気のもとでしかも戸外ですので、 たばこを吸う人はのびのびとたばこを吸っています。父兄は子供を連れてきて、 比較的大きな子供には作業を手伝わせたりしながら割とマイペースで作業が 進められます。我々ボランティアも一生懸命仕事に精出し、作業は順調に進んで います。現地校の父兄との交流もそこそこ順調に進んでいます。作業開始して 1時間くらい経ったところで、校舎の南側の面のたい肥まきがほぼ終わりました。 それを見て、米人が「終わったな」と言いました。私は「まだ北側もあるよ」と 言ったところで「これだから日本人のマネージャーはタフだよな」と言われて しまいました。そういえば校庭の片隅にはテントが張られて、その下にテーブル が並べられ、飲み物が並んでいるではありませんか。そうだ、こんなに働いたら、 やっぱり休まなくっちゃ。私は、この米人に、「そうだ、休憩しようや」と 言って、休みを取りました。

−それからまた仕事−
飲み物をとり、再び作業が始まりました。たい肥も撒かれ、花も植えられ、枯れ 松葉も敷きつめられてゆきます。私だけではなく日頃から日本人は庭いじりが 得意ではありませんから、あまり要領が良くありません。そう言えば、何時の間 にか、一生懸命仕事をしているのは、ほとんどが、日本人になってしまいました。 我々は、何とか昼前に終わらせようと、一生懸命仕事を続けます。そのおかげで どうやら昼前までに、作業は片付きました。校舎の南側にある、先ほどのテント に行ってみると、米人は今度はグリルで、ソーセージを焼いたり、パンを用意 したりして、お昼の食事の用意をしていました。だから、たい肥のところから 一人消え、また一人消えとしていったわけです。これこそ、発想の差ではないか とうなりました。なるほど、これも仕事そのものと同じくらいに大事だな、と 思うと同時に、私は何をしていたのかと思わず考え込んでしまいました。 彼らも、サボっていたのではない、仕事をしていたのだ!!!!

−兵站(ロジスティック)思想?−
うーん、これは太平洋戦争と同じだ、と私は考えました。作業だけに集中してい た我々は、その作業が、補給によって成立する事を「まったく」考えていなかっ たのです。ただ作業をまじめにやって、早く終わらせる事が重要だと考えていた わけです。ですから、目的は「たい肥の散布」なのですが、それをいかに「作戦」 として位置づけるかに、重大な見落としがあったと考えてしまいました。 これは、旧日本軍の過ちを繰り返してしまったと気づかされたわけです。

−するなら楽しく−
今回初めて地域ボランティアなるものに参加してみましたが、参加している人は 「するなら楽しく」という感じで、一人一人の自主性を尊重しつつ行われていた ように思います。ですから我々は、自主的にたい肥運搬を最後までやった事に なるわけです。その事は、私たちのような「仕事の仕方」も認められているわけ ですが、でも「ロジスティック」も担当は必要であり、しかもそれは重要ですか ら、米人が積極的に関与している事になったわけです。
そして、作業が終わって一緒に仕事をした人と話しをするのは、お互いのコミニ ュケーションとしてもすぐれています。ちょっとした事でも、それなりの工夫で 楽しい機会にしてしまう知恵は、見習うべき事だと思いました。
それにしても、「ロジスティック」思想がこんなに隅々まで浸透していることを 実感しました。それが実は、米国の安いコストの強いインフラと大きくつながっ ているのではないかという思いを強くしました。

ちょっとしたボランティアではありましたが、米国社会の本質が顔を覗かせて いたりして、楽しかったです。さらに、もっといろいろと参加してみたいと思うこのごろです。


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