Charlotte Weekly 1997.03.16.号 通巻 第33号

タダほど恐いものは・・の巻

今週は、米国での生活体験からの「タダ」がどのように使われているかそして それが、どのように生活に反映されているかを、ご報告します。

まず、米国では「Free!」という言葉が、 TVでも、お店の広告でもずいぶんと 目に付きます。やはり「Free!」にはお客にとっての「もらい得」だけでなく、 提供する側にもそれなりの、理由があることが多いです。実際の体験からしま すと、その使われ方には、次のようなものがあると、考えられます。

−固定客獲得のための「Free!」−
これは、いろいろな定期購買型の商品で、取り入れられます。典型的な例は、 マイクロソフトやアメリカオンライン等がやっているパソコン通信会社の 手法がそれにあたります。具体的には、フロッピーディスクやCD−ROMで、 接続ソフトが「タダ」で提供されます。そして最初のある時間の使用料は、 「Free!」になっています。しかし「Free!」で使うにしても、利用者は「事前」 に「予備登録」をすることが必要になるわけです。その「予備登録」で実は 「本登録」もできてしまうわけで、「Free!」の時間を使ったあとは、「登録」 を「取り消し」する行動をとらない限り、ほぼ「自動的」に「固定客」へと つながってしまうシステムです。はじめは、「タダ」でも、断らない限り、 ほぼ自動的に、月ぎめ料金を払う「固定客」になるわけです。
しかし、この方法は、接続ソフトを配布する初期投資にお金がかかります。 成果が上がるかどうかは、やはり内容によるところが大きいようです。

アメリカオンラインという会社は、現在は600万人の固定客を持つ、大ネット ワーク会社になりましたが、ここ2-3年は、いろいろな雑誌に接続ソフトの 入ったフロッピーディスクを添付させて、キャンペーンを張り、急成長を遂げ ました。また、マイクロソフトはMSNというネットワーク会社を作り、自社 のいろいろな製品に、MSN接続用のソフトを入れて、販売しています。 また、Internet Explorerも「タダ」で配布していますが、こちらは、(本業の ソフト売りに比べて)あまり成功しているとは思えません。
個人的には、このような配布ソフトがたまって、私のところには、100枚以上 のフロッピーディスクが「初期化」されて出番を待っています。 同じように、雑誌の購読などでも、はじめは「Free!」で黙っていると、その まま、「固定客」になってしまうシステムもあり、米国では「おとなしい」 ことは、「Yes」という通念を実感します。

−販売情報収集のための「Free!」−
次は、最近多くなってきた、情報収集のための「Free!」です。 これは、消費者に興味のある分野の、ある商品を「Free!」で提供し、その 消費者の「嗜好」と「個人情報」を入手し、その人の興味ある分野の、ほかの 商品も販売してゆこうとするものです。 これは、最近増えてきているようで、顕著なのは「ゲームソフト」関連です。 いくつかの、「少し古くなったソフト」を「Free!」で配布して、消費者の 「個人情報」を入手し、次々と関連する商品を、ダイレクトメールで宣伝して ゆくものです。一昔前の、大量宣伝、大量販売から「的を絞った」顧客開拓 へと進んでいるのが、わかります。これも、コンピューターの発達に伴う、 顧客データの選別が、可能になったことから、発生していると思います。

−技術情報収集のための「Free!」−
これは、最近の「ソフトウェア」開発のための、事前トラブルチェックに使わ れることが増えてきた手法です。消費者にとっては、新しいソフトウェアが どんなものであるかを、いち早く知ることができますし、しかも「タダ」で 使えるわけです。それに対して、製作者からすると、事前に多くの人に、いろ いろな環境で使ってもらえると、細かな問題点や、ユーザーの声が多く集まり ます。それを製品に反映させれば、トラブルの少ない、売れるソフトが作れる ように、なるわけです。これは、最近顕著になってきた、消費者とメーカーの 協力関係を作る、大きな動きの一つだと思います。

−大量販売のための「Free!」−
これは、今でも盛んですが、2つ買ったらおまけがもう一つというやつです。 米国では、このような場合価格を33%割引にはしません。必ず、おまけに します。特に食料品などに多く見られます。個人的には、米国人の「肥満」 の一つの原因は、この販売方式を受け入れてる、米国の消費者にあると推定 しています。お買い得で、しかもたくさん食べることができるのですから。 いずれにせよ、大量生産、大量販売の世界が作り出した、もっとも米国らしい 「Free!」だと思います。

−狂った「Free!」−
これは、とても不思議な「Free!」です。ある商品を買うと、買った後で、 商品に添付されている、クーポンを送ると、支払った金額が返済されるという ものです。はじめは、面白半分で見ていましたが、よく考えると、その商品の 物流経費や、販売経費すら出ないで、物が消費者に「Free!」で渡ってゆくわ けです。何でもありの販売方式ですが、この場合にはもはや、フェアな販売 とは言えないと思います。それでも、社会的な問題にはならずに行われていま すから、消費者、あるいは販売者が圧倒的に強い世界であると、考えざるを 得ません。それにしても、「Free!」の多いのは「Freedom」の米国の意志そのも のなのかも知れない等と考えてしまうこのごろです。

−編集後記−
インターネットで読む日本の新聞には、熊本での桜の開花宣言が出ていました が、ここCharlotteでも、白い花や、桜のような花が、ほぼ満開です。 (残念ながら、日本名は分かりませんが)最近は、ウィークデーは出張が多く、 帰ってくると、新緑が街中に広がっているのを実感します。

そんな季節の中、Charlotteにある、日本語補習学校の尾形校長先生が、学校 のホームページを立ちあげてくれました。 Charlotteの街や生活については、こちらをご覧いただけると、一層理解が 深まるかと思いますので、ぜひアクセスしてみてください。このCharlotte Weeklyのバックナンバーも、読めるようになっていますので、よろしく。 URLはhttp://www.concordnc.com/jlscです。こちらへもメールなど、お寄せ 下さい。


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